オオムラサキシメジ?と思われるきのこについて

数年前、東京都内の百貨店で定期的に開催されるヨーロッパ食品フェアで、輸入のフレッシュきのこが取り扱っていると知り立ち寄ってきました。ワインやチーズ、ソーセージにパスタなどの食材の中で、フレッシュハーブなどと共に様々なきのこを見ることができました。

その中でも特に関心したのがこの紫色のきのこ。ピエブルーと書かれており、ムラサキシメジ(Lepista nuda)かな?と思いました。

店頭に並ぶきのこ(a)

店頭に並ぶきのこ(b)


お店の方のご厚意で写真を撮影させて頂き、少しだけきのこを購入してきました。よく観察してみると傘の色は、淡いベージュ状をしており、それに比べて柄の紫色が際立って濃い紫色に見えました。肉質は、傘・柄共にとても充実ししっかりとした感じです。

 

子実体の雰囲気は、市販されている「ホンシメジ(Lyophyllum shimeji )」によく似た印象を受けました。

軽く火を通してソテーしてみましたが、きのこ特有の甘味とジューシーな肉質でとても美味しいきのこでした。

 

このきのこも勉強のためと子実体の組織から菌の単離を行い、PDA培地で分離培養をしてみました。培養した菌糸ははっきりとした紫色でアメジストのような色彩を持ったコロニーだったと記憶しています。

Lepista属の培養菌糸は、ムラサキシメジ・コムラサキシメジでも同じように培養菌糸は、紫色をしています。継代培養を繰り返すうちにこの紫色の特徴は失わてしまうことが多いのですが、このきのこは、自身がこれまで見てきた Lepista属の中でも際立って紫色の色が強かったと記憶しています。

 

では、そもそもこのきのこは、本当にムラサキシメジなのでしょうか?

結局のところ、私の見解では、『種』を同定することができませんでした。ただし、ヨーロッパや欧米の図鑑などを見てみると、Lepista personataという種は、傘と柄の色が異なり、柄の石突の部分が特徴的に紫色がかるきのこの写真をいくつも見つけることができました。

もしかしたらこれが、オオムラサキシメジというきのこなのだろう?と個人的には解釈しています。


では、そもそもこのオオムラサキシメジというきのこは、日本には分布していないのか?

私もとても気になっていた時期がありあちこちの専門家にお尋ねしたことがあります。

そもそも、今関本郷図鑑の他、北海道のきのこ図鑑に記載があることや、古くは、伊藤誠也の日本菌類誌(1959)にも記載があることが分かりました。そのことを知ってから数年たち、さまざまなSNSなどを見ていますが、柄が極端に紫色になるLepista属の写真を見ることができていません。


また、実際にきのこ採りに野山を散策してみると、ムラサキシメジ、コムラサキシメジによく似たなんだか判らないきのこが意外に目につきます。

私が密かに気にしている、オオムラサキシメジ。いつか自分で採集できたらいいなぁ。と思っています。


*注1)紫色をしているきのこがすべて食べられるわけではありません。同じ属のきのこには、ウスムラサキシメジ(Lepista graveolens)という毒きのこや、名前がついていないフウセンタケの仲間などもよく似たきのこが無数にあります。ネットなどの情報で食べられると判断するのは、とても危険なことなのでご注意下さい。

*注2)ネットで「ピエブルー」と検索すると、食材で販売されている多数の写真が出てきます。ぜひ、そもそもこのきのこがなんというきのこなのか?分かる方がおられたら教えていただけましたら幸いです。