『シロは墓場まで持っていけ』松茸狩りについて坂井きのこさんに聞いてみた

松茸(まつたけ)は『きのこの王様』の異名を持つ、秋が旬の高級きのこです。

ぶなしめじやえのき等に比べて普段見かける機会はとても少ないですが、松茸の名は日本人なら誰でも知っていると言っても過言では無いでしょう。

マツタケ

 

しかし、どんな場所に生えるのか、どうやって育つのか、どうやって収穫されているのかを知っている方は少ないと思います。

そこで今回は、実際に地元の長野県で松茸狩りをしているお笑い芸人 坂井きのこさんにインタビューさせていただき、その内容を記事にまとめました。

 

インタビューの様子はこちらの動画をご覧ください。

 

坂井きのこさんの芸風などについては、こちらの記事で紹介しています。

www.kanto-kinoko.com

 

 

松茸(まつたけ)はどんなきのこ

松茸は『きのこの王様』と言われている、香り高い高級きのこです。

毎年旬の秋になると、木箱に並べられた松茸がスーパーや八百屋さんの棚に並び、焼き物、土瓶蒸し、炊き込みご飯、お吸い物などで楽しまれています。

木箱に入ったマツタケ

 

その名前からも想像できるように、松茸はアカマツの木の根元に生えるきのこで、今のところ人工栽培が出来ません。

そのため天然物を採って流通するしか無く、松茸採り名人と呼ばれている人たちもいますが、基本的には見つけづらく、発生する本数も少ない『採りづらいきのこ』なので、希少価値で高級品となっています。

その松茸の最大の特徴と言えば、なんといっても『香り松茸、味しめじ』で名高いあの独特な匂いでしょう。

松茸の匂い成分はマツタケオールと言い、日本人にはとても好まれています。

ところが、逆に海外では『軍人の靴下の匂い』と評され嫌われてきました。

そのため、アメリカやロシアなどでも松茸は採れますが、日本人しかあまり食べてこなかったという歴史があるんです。

 

松茸狩りについて

松茸が生える時期や環境、素人だけで松茸狩りに行かない方が良い理由などについて、坂井きのこさんに教えていただいた内容をまとめました。

 

松茸狩りが出来る時期

松茸はだいたい7月~10月ぐらいに発生するきのこです。

7月~8月頃に出るものは、『早い松茸』という意味で早松(サマツ)と言います。

また、長野県などでは『バカマツタケ』とも呼ばれています。

何でバカなのかというと、出てくる時期が違うから。

松茸は普通9月頃から出始めますが、サマツは7月8月のまだ暑い時期に出てくるので、『お前こんな時期に出てきたバカだなぁ』からバカマツタケ。

もう一つは、ミズナラやコナラなどの広葉樹林に生えることから。

松茸はアカマツなどの針葉樹から生えるきのこなのに、夏のサマツは広葉樹に出てきます。

『生える木を間違えたから』バカマツタケというわけです。

いわゆる普通の松茸は、9月頭から採れはじめて、だいたい10月中旬くらいまで採れます。

 

松茸が生える環境

まつたけ狩り

松茸はアカマツの根元から発生します。

と言ってもアカマツがあればどこでも良いわけではなく、枯れた土地であることがポイントです。

きのこは普通、湿度の高いジメジメした環境や、落ち葉が積み重なったような場所を好むイメージがあると思いますが、松茸はその逆。

むしろ日が適度に当たり、風通しの良い場所を好むんです。 

これは、松茸の菌が他のきのこの菌より弱く、生存競争に負けてしまうという事が関係していると考えられています。

枯れた葉っぱが積み重なり、腐葉土がたくさんあるような所には、栄養もたっぷりあります。

そういった場所には生存競争に勝ったきのこがぐんぐん育ちますが、松茸は他のきのこ達に負けてしまうので菌糸を伸ばせません。

だからあえて他のきのこ達が育ちにくい、枯れた土地で生息するようになったと言われています。

 

シロ(松茸の生える場所)は秘密が基本

松茸が毎年生えてくる場所を『シロ』と言います。

長野県では『松茸のシロは墓場まで持っていけ』という名言があるくらい、基本的に他人には教えません。

これには、希少価値の高い松茸の乱獲を防ぐと共に、来年以降も生えてくるようにシロを守るという意味もあります。

松茸は弱いきのこなので、例えば土を掘ってしまったり、松を傷つけたりすると、どんどん採れる確率が少なくなってきてしまいます。

だから、松茸のシロは秘密なのです。

 

松茸狩りは素人だけでは行かない方が良い理由

松茸狩りのイメージ

松茸狩りは名人でも100%採れるわけではないし、簡単ではありません。

だから希少価値が付いて、あんなに高価なわけですしね。

素人がいきなり山に行っても採れる可能性はかなり低いでしょう。

また、素人だけで松茸山に入ること自体が危険行為です。

松茸は勾配が付いているところや標高が高いところに生えるため、そういった場所にどんどん入っていってしまうと、帰ってこれなくなってしまう恐れもあります。

きのこ狩りは下を見ながら歩くので、道に迷って遭難しやすいんです。

素人だけで松茸狩りに山に入るのは絶対にやめておきましょう。

 

松茸はなぜ人工栽培できないのか?

ブナシメジの菌床栽培風景

えのきやなめこ、ぶなしめじは工場規模で大量に生産され、一年中どこでも安定して安価に購入することが出来ます。

では、なぜ松茸は同じように人工栽培できないのでしょうか。

その理由は、松茸が『菌根菌(きんこんきん)』という種類で、栽培きのこ達とは栄養の摂り方が異なっているからです。

えのきやなめこ、ぶなしめじは、全て『木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)』のきのこです。

枯れ木などの木質を分解しながら栄養を吸い取っていく菌で、この種類は比較的栽培がしやすいと言われています。

一方、菌根菌の松茸は松の木の根に菌糸を張り巡らせて繋がり、お互いに栄養を交換しながら成長していきます。

 松茸の菌糸は松の木が直接摂りこめない土中の栄養を集めて木に与え、逆に松は光合成で作った栄養を松茸菌に与える。

お互いがお互いを支え合って、共生関係を築いているんです。

そのため菌根菌は、『共生菌(きょうせいきん)』とも言います。

この種類のきのこはまだ未知な部分が多く、人工栽培法も確立していません。

ちなみに、松茸の菌自体は培養できるそうですが、仮にその菌をアカマツに植えたからといって松茸が生えてくるとは限りません。

水をあげるだけではダメ、栄養のある腐葉土を集めてもダメ。

松茸が生えてくるスイッチの入れ方が分からないんです。

多種類のきのこが栽培されている現代においても、松茸の人工栽培はまだ『夢の技術』なのです。

 

まとめ

  • 松茸は7月~10月くらいに生える。そのうち7~8月に生えるのはバカマツタケで、一般的な松茸は9月頭~10月中旬くらいまで
  • 松茸は枯れた土地のアカマツの根元に生える
  • 松茸狩りの難易度は高く、山で遭難してしまう可能性もあるため、素人だけでは行かない方が良い