シロクモノコタケというきのこ

シロクモノコタケ(Arachnion album)

 

以前、所属していたアマチュアのきのこの会の会報誌に見たこともない腹菌類の写真が掲載されました。


シロクモノコタケという名前だそうで、腹菌類や地下生菌を数多く研究された(故)吉見昭一先生がその昔に報告してたことなどを知りました。

しかし私自身は、腹菌類と称する丸っこいきのこや地下生菌に大した興味も感じず特に気にも留めていませんでいた。

 

それから、月日が経過し子供を連れて何気なく近所の公園に遊びに出かけた時の事です。砂地の芝生の上に座ってぼーっと子供らが遊ぶ様子を見ていたところ、一面にコロコロした白い球状のきのこが出ているのが分かりました。

 

どうせ、外見からは名前は分からないしと何気なく、指でつぶしたところ、粒状の菌糸の塊がモロモロと出てくるのが分かりました。なんだこれ?

シロクモノコタケ@愛知県豊橋市市内公園にて(a) 採集日:2011.9.4

シロクモノコタケ@愛知県豊橋市市内公園にて(b) 採集日:2011.9.4

私がこれまで見たことのある腹菌類の多くは、新鮮な個体の場合、中身が白っぽく緻密な菌糸が詰まっている印象と記憶していました。これは、今まで見たことがない…。

そういえばと、改めてその会報誌や、2006年にマイコサイエンスという菌類の専門誌に記載された内容を自分なりに読んでみました。砂地でみられることや関西の一部の地域など何となく、これはシロクモノコタケだろうと判断しました。


その後、この写真の標本は研究者に同定を依頼し、貴重な標本だからと博物館に寄贈することができました。


本種は、2007年に出版された『兵庫のキノコ』以外には、なかなか一般の方が手に入る図鑑などには掲載されていない比較的マイナーなきのこです。ただ、現在は、専門的にきのこを研究しているアマチュアによって、美しい子実体の写真がネットで簡単に検索できるようになりました。

 

比較的珍しいとされるきのこですが、私が見つけたのは市街地にある大きな児童公園です。地域の方がごく普通に散歩をしたり犬を連れたりと、多くの人が歩き回れるような環境です。こういったところでも、丁寧に観察すると意外な発見があるんだなぁ。と改めて実感した想い出のきのこの一つです。

www.mushroomexpert.com

www.sciencedirect.com